金融庁は3月28日、昨年10月~11月にかけて同庁が実施した「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査」の集計結果を公表しました。様々な例を揚げていますが、当センターで扱った事例を紹介します。

中京地区で、6000万円の担保価値しか無いのにも係わらず、8000万円のオーバーローン融資の実行を行なおうとした地銀がありました。

この事例は、アパート建築用地が有りましたが、頭金や諸費用がない場合のオーナーに対しての建築会社(サブリース建築・管理一体型)と地銀が組んだ猛烈な営業でした。

シエアハウス事案と同様な構造で、この様な事例は他地区でも多くあります。

「オーバーローン」(諸費用コミ)の種類

一般的に、「オーバーローン」(諸費用コミ)の手法は何種類かあります。

  1. プローパーローンで正面から金融機関に承認をもらう方法です。
  2. 通常は90%のパッケージ融資という原則のところ、サブリース建築・管理一体型でサブリース経営を行なう前提であれば、その銀行支店の状況をうまく利用して、特別にフルローンをもらう方法です。
  3. パッケージの90%融資とその他の金額をカードローンや不動産担保ローン・他融資商品等の高金利な融資を組み合わせることもあります。

頭金なしのオーバーローン

サブリース事例ではないのですが、昨今良くある事例の特徴です。貯金もあまりなく、年収も平均以下の方が一発逆転で不動産投資を志す際にみるケースです。

当然、資産状況が芳しくないところ、無理して融資を引いたので、万が一の際に耐えられる金銭的余裕はありません。

当初は順調に運営をしていましたが、運悪く大きな漏水が判明。数百万円の資金が必要となりましたが、なんとか修繕用の融資を引きましたが、このトラブルで入居者が何室か退去し、近隣の家賃相場も大きく下がり、入居率も悪くなっていきました。追加で増えた修繕費の支払いもあり、収入が返済に届かなくなり、八方塞がりの状態になって行きます。

売却を考えたとしても、オーバーローン+修繕費が残っていたので、債務を帳消しにする額での売却は、元値より高値での売却が必須のため、相当に難易度が高くなってしまします。

このように融資額が大きいオーバーローンは、大きな罠があります。リスクに耐えられなくなり、デフォルトに陥るケースもあります。

日本の住宅ローンには消費者保護がない

金融機関が取り扱う商品の多くは「金融商品販売法」などで、販売する際に商品内容やリスク等についてお客さまに説明することが義務付けられていますが、 住宅ローンはその対象外となっています。収益物件融資を含め現状の問題を解決するには、業界横断的ルールが必要(金融機関+不動産業界)で、また、リスク説明の共通ルールが必要です。

金融商品の販売等に係る勧誘方針とは(名古屋銀行の例)

当行は、金融商品の販売等に関する法律第9条(勧誘方針の策定)、確定拠出年金法、その他各種法令等に則り、次の5項目を遵守し、適正な勧誘に努めます。

  1. お客さまの知識、経験、財産の状況および投資の目的を踏まえ、適切な商品の勧誘を行います。
  2. お客さまご自身の判断と責任においてお取引きいただくため、商品内容やリスク内容などの重要事項を十分にご理解していただくように努めます。
  3. 断定的判断を提供したり事実でない情報を提供したりするなど、お客さまの誤解を招くような説明は行いません。
  4. 深夜の勧誘など、お客さまの不都合な時間帯やご迷惑な場所での勧誘は行いません。
  5. 研修体制の充実など、お客さまに対して適切な勧誘が行えるよう体制整備に努めます。

引用:https://www.meigin.com/financial-instruments.html

 

資料

住宅ローン利用者の現状と問題点

 

大谷昭二(日本住宅性能検査協会理事長)

(サブリース問題研究会)